Thursday, September 1, 2011

IPSの冊子を読んで感じたこと

Intentional Peer Support (IPS)のワークブック*を読まれた、たけちゃん(たけちゃんのブログはこちらからメッセージをいただきました。

皆様が、IPSに触れた感じられたこと、気づかれたこと、共有できるのはとても有り難く、うれしいです。 どうもありがとうございます!

個人的なメッセージの部分を一部省略の上、ご本人の許可を得てここに記させていただきます。( )内は宮本の註です。

(前略)
小冊子(←IPSのワークブックです。末尾に註*)を1・2巻だけざっと目を通してみました。感想はIPSは広い意味で教育の一環なのではないかということです。作者は精神医学のカテゴリーで相手をとらえることを禁止していますが、これは「ものぐさ数学のすすめ」で有名な森毅・元京大教授の「落ちこぼれと決めつけていたら教育などできへん」というセリフと同じだと思いました。「落ちこぼれ」を「精神障碍者」と変換すればそのままですものね。(中略)教育は全人格的な交わりです。特に若い人は肩書きだけの人物かすぐに見破ります。講義をすることは教授する人の「世界観」を学生さんに伝授することではなく、学生さんの「世界観」に基づく恣意的解釈に身を委ねる、「命がけの飛躍」を伴う弱い立場に身を置くことです。そうした弱い立場に身をさらすことに耐えられない人々が「権威」という「ソフトパワー」をちらつかして現実を倒錯的に扱おうとするのですが、若い学生さんは本能的にそれを見破るのです。文化人類学者山口昌男氏の「教育とは壊すか壊されるかの怖い営みだ」という言葉もそのことを指していると思います。
(中略)

IPSの小冊子を読んで気づいたことをもう一つ書かせてください。作者はより良き人生を生きるためにこうありたい自分に向かって前向きに努力することを求めていますが、これはキリスト教の位階秩序を一つ一つ上に上ることの焼き直しに思えます。日本では「方丈記」や「平家物語」から連なる「無常」をめぐる議論の蓄積があり、「ただ生きる」ことを肯定する思想があります。この思想を突き詰めていくと「生きているのも死んでいるのも同じこと」という命題にたどり着くのですが、流石にアメリカ社会の「周縁」に位置するIPSの創始者にしても文化的差異が大きく、IPSの枠組みの中でとらえられなかったよう思います。ここがIPSの限界であり、やはり日本という文脈に引き直した自前の回復プログラムを用意する必要性を感じます。
(後略)

*IPSのワークブックの原文(英語版)は、Peer Support: an Alternative Approachで、Shery Mead(シェリー・ミード)さんのウェブサイトから購入可能です。
http://www.mentalhealthpeers.com/index.html
このワークブックの日本語版は、現在IPSの研修会や勉強会で販売しています。

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