Friday, April 27, 2012

質的データ分析法メモ (2)

マデリン M. レイニンガー(Madeleine M. Leininger) 編集, 近藤潤子、伊藤 和弘 (監訳)「看護における質的研究」(原版1985年、日本語版1997年)医学書院. の中(p.75~)で紹介されている分析法メモの続き。

内容分析あるいはテクスト分析 (p.81)
内容分析は、人々の間で伝達されるほとんどすべての物事を分析するのに昔から用いられてきたお馴染みの方法である。・・・中略・・・
構成的テクスト分析は、テクストデータの構造を異なる機能的要素のグループに分類するもので、出来事、人間、過程を類似性をもとにグループに分類できるので、内容分析で広く用いられている。・・・後略・・・

解釈学的データ分析 (p.82)
解釈学的分析とは解釈についての理論である。・・・中略・・・ 解釈学は現象学に由来するものであって、先験的理解を組織化する思考と方法に焦点を当てるものである。・・・後略・・・

民族科学的分析 (p.83)
民族科学的分析は、知識の諸領域の意味論的・構造的関係を判定するために用いられる公式的・外字的・系統的なデータ分析法である。・・・後略・・・

グラウンデッド・セオリー分析
・・・前略・・・ 比較分析という手段によってデータから理論を発見するのが目標である。この方法と人類学的な記述民族学の方法との間には類似点と相違点がある。・・・後略・・・

構成要素分析
構成要素分析は、特定のイーミックな構成要素または概念の意味論的・構造的関係を判定するためや、構成要素から得られる抽象的論述を公式化するために用いられる複雑で厳密な系統的方法である。この方法は単独でも用いられるが、ふつうは民族科学的方法と一緒に用いられる。・・・後略・・・

歴史的分析 (p.84)
この分析法は、研究者のさまざまな目的や目標に応じて過去の縦断的な歴史的データを系統的に探求するものである。時間・空間的な出来事、パターン、および過程を明確化するために、一次データと二次データが外示的・内示的に分析される。・・・後略・・・

生活歴プロフィール分析
この方法は、看護やその他の医療分野では比較的新しい価値のある研究法として、個人、家族、集団の生活歴(ライフヒストリー)を分析し、生活様式、健康、ケアのパターンを評価するのに用いられている。・・・後略・・・

個人の健康研究分析 (p.85)
個人の健康研究分析は、特定の個人が健康、パターン化された病気、その他行き方のスタイルを維持する方式を、長期(あるいは短期)間、異なる(あるいは同じ)環境的コンテクストのなかで研究する方法である。・・・中略・・・
筆者は“事例研究(ケーススタディ)”という用語に代えて“個人の研究”と言う用語を使用している。なぜなら、質的研究の場合には、個人を、対象、事例(ケース)、統計的数字としてではなく、一人の独自な人間存在として扱うからである。間違いなく専門職看護研究者は“事例研究”という用語に馴染んでいるであろうが、今やこの非個人的用語の使用を考え直すべきであり、個人とその健康、病気、ケアのパターンを人間的な方法で分析することを考えるべきである。・・・後略・・・

形態分析
・・・前略・・・ 形態分析は構成要素分析、パターン分析、主題分析と似ているが、この方法のほうが、分析により大きなモル(総体的)単位(molar units)を用い、複雑な文化的主題とパターンを形態もしくはモレキュラー(分子的)デザイン(molecular design)にまとめて、文化、システム、集合的行動などの把握を可能にする。・・・後略・・・

象徴分析 (p.86)
象徴(記号)分析は、さまざまな合図、メッセージ、図像、物象、その他の人間表現の形式を分析する方法である。・・・後略・・・

描画、ゲーム、絵画テスト、遊び、物語、写真データ分析
これらの表現方法は質的データの分析では重要である。これらは、個人や集団の感情、態度、パターン化された表現を記録し、理解するのに用いられる。・・・中略・・・
描画、写真、その他の表現形式は、人々の見方を表しており、したがって質的なタイプの研究データとして分析する必要がある。・・・後略・・・

コンピュータ・データ分析 (p.87)
・・・前略・・・ 量的データの分析にコンピュータの果たす役割は非常にはっきりしているが、それに比べ質的データの分析においてもつ価値は現在のところそれほどはっきりしていない。意味、態度、特性、象徴、監修、その他質的データのもつ多くの側面が失われないようにすることが、コンピュータ学者や質的分析者にとって今後対処しなければならない大きな課題である。論述を数、特定の変数、その他の還元主義的要素に還元することは、質的データの意味と目的の破壊につながりかねない。・・・後略・・・

その他の分析法
・・・前略・・・ そのほかにも次のようなタイプの分析法をぜひ考慮する必要がある。
役割・家族・制度分析
認知地図と世界観
象徴的相互作用分析
比較文化分析
倫理・道徳分析
参加分析
属性分析
生態学的ケア分析
系図(系譜)分析(血族の系図)
物質的・非物質的データ分析
意味論的・記号論的分析
質的分析と量的分析の組み合わせ
健康カレンダーおよび健康日誌分析


ほんとうにたくさんあります。。。今回、これらの解説を読んでいて、意味の分からない言葉もたくさんありました。しかしながら、???と思った部分なども、「個人を、対象、事例(ケース)、統計的数字としてではなく、一人の独自な人間存在として扱う」ということで異なる言い方を提唱していたり(個人の健康研究分析)、その考え方に納得できるところが随所にありました。
この本を持っていたら、「懐かしい本!」と言われまして、原版は1985年、日本語版は1997年と、確かに懐かしいと感じる部分もありましたが、久しぶりに手に取って、あらためて学ぶところもたくさんある本でした。


出典:
M. M. レイニンガー. (黒田裕子訳)記述民族学と民族看護学 質的データ分析のモデルと方式. レイニンガー編, (近藤潤子, 伊藤和弘 監訳) 看護における質的研究. 医学書院, 1997.
原版:Leininger (Ed.), Qualitative research methods in nursing. Grune & Stratton. (1985)

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